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血液学研究への献身 (Rossix AB)

掲載日情報:2017/01/13 現在Webページ番号:66058

Frontiers

Vol. 74 血液学研究への献身

Rossix社は、プロトロンビン、Factor Ⅷ/Ⅸ/Ⅸa/Ⅺaの酵素活性を測定するキットを開発・販売するスウェーデンのメーカーです。今回、Rossix社の設立者であるDr. Steffen Rosénにお話を伺いました。



《 取り扱い製品 》
血液凝固因子の活性測定キット
血液凝固試験に最適化されたリン脂質エマルジョン

Rossix社の設立者であるDr. Steffen Rosén

科学者としての道を選ばれたきっかけは何でしょうか。

高校の先生に生化学に熱心な方がいて、その影響で私は生化学に強い関心を持つようになりました。 大学では基礎研究として選んだ分野は数学と化学で、アドバンスコースに進んでからは分析化学を専攻しました。 アドバンスコースの7か月間のなかで1つの課題をこなしたのですが、ここで学んだことが自分にとって非常に価値のあるものでした。 分析に関するしっかりとした知識を習得し、丁寧な仕事をすることの重要性を認識することができ、これが生化学分野の博士課程に進んだバックグラウンドとなりました。

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血液学を専門分野として選ばれたのはなぜですか。

私が血液学に関わるようになったのは、まったくの偶然だったのです。私は博士課程でCytochrome c oxidase(呼吸鎖で機能する最終的な酵素)について研究していました。 1978 年に博士号を取得した後、私はいくつかの就職先に応募しました。しばらく経ったある日小さな広告を見つけました。それは、とある臨床検査会社の「6 カ月間だけの臨時雇用職」の応募広告でした。 その会社は血液学に関わる製品を取り扱っていました。当時、私は化学と生化学の非常勤講師の契約をしていましたが、臨床検査会社で働く余裕もあったのです。

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当時の仕事内容や当時の血液学を取りまく環境について教えて下さい。

Rossix 社およびRossix 社の開発・製造するChromogenic Kit シリーズは、私の前職(Chromogenix 社、旧Kabi Diagnostica社)での仕事と明確な繋がりがあります。 Chromogenix 社は発色基質「Chromogenic substrate の開発」という先駆的な仕事を成し遂げました。 1975 年にリリースされた最初の基質S-2160(トロンビンの基質)は、フィブリノペプチドA およびB におけるトロンビン切断部位の前に3 アミノ酸を付加したものです。

Chromogenic substrate(S-2160)

この基質に続き、血液凝固・線維素溶解で機能する酵素の活性を測定するためのChromogenic substrate も続々と開発されました。 Chromogenic substrate はChromogenix 社の成功の基盤となり、製品は日本を含め世界中で販売されました。

さて、Chromogenix社で1978年9月から6か月間の臨時雇用として働きましたが、その頃は血液学に関する新たな知見が相次いで報告されていました。 新しいタンパク質精製技術や解析ツールが生まれ、それらが止血タンパク質の機能解析に用いられ始めていました。 1970年代後期から1980年代初期にかけては、プロテインCやプロテインSといったタンパク質が発見されました。 この頃、FⅧとvWFが異なるタンパク質ではあるが、FⅧは常に血中でvWFと複合体を形成していることが明らかになりました。 また、FⅧは酵素ではないが Xase(テンナーゼ)複合体中で補因子として機能し、カルシウムイオンおよびリン脂質存在かでFXはFⅨaにより活性化されることも示されました。 FⅧの補因子活性はFⅧ自身がトロンビンによる切断を受けることで急激に活性化するということも分かってきました。

私の仕事はChromogenic FⅧmethod というコンセプトを最終調整し、Coatest Factor Ⅷ kit として製品化することでした。 仕事を始めて、このコンセプトは完成にはほど遠く、robust なkit ではないと分かりました。 1979 年初め、半精製したヒトFⅨを用いて、より厳密な生化学反応によるアプローチでいくつかの重要な実験を行いました。 その実験結果では非常に有望なデータが示され、Chromogenic FⅧ method の完成に向かって前進することが可能となりました。 そのようなこともあって、私の「6 カ月の臨時雇用」は「正規雇用」に変わり、最終的に22 年間勤続したという形になりました! Chromogenic FⅧの完成には、技術面でも戦略面でも検討すべき課題がいくつかありました。当時は「A 型/B 型肝炎ウイルスの輸血への混入」が問題視され始めた頃で、ヒト凝固因子タンパク質をとりまく様々な懸念が存在していました。そのためヒトではなくウシの凝固因子を用いたChromogenic method を開発することが好ましいとされていました。

私はChromogenix 社が雇用した生化学者 第一号だったので、タンパク質精製の経験を活かすことができました。 まず文献を丁寧に読み込んで考察し、FⅨ、FX、FXIa、FⅫaを精製する系を作り上げました。 それはもう何時間も何時間も低温室に籠って実験しました。 実験する中で、試薬の純度、得られるタンパク質の収量・安定性、実験プロセス自体のパフォーマンスなど含め、いくつかの問題に直面しました。 Clotting method よりも優れた特徴を引き出すために、検査項目(製品仕様)は良い意味で厳しかったのです。 私は幸運なことに優秀なスタッフに恵まれ、実験はうまく前進していきました。 私はChromogenix 社において徐々に管理職としてキャリアを積んでいき、様々な製品の開発に携わっていきましたが、この最初のプロジェクトで得られた経験がとてもかけがえのない経験だったと感じています。

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Rossix 社設立のきっかけを教えて下さい。

Chromogenix 社はInstrumentation Laboratory 社に1996 年に買収されましたが、その数年後にChromogenix 社の活動拠点がスウェーデン国外に移ることになり、 国内にあったChromogenix 社施設は閉鎖されることになりました。 2000 年4 月のことでした。 私はそのとき53 歳。これは何かのきっかけだと感じ、私自身の会社を立ち上げることに決めました。 Rossix 社設立後は、血液凝固因子の活性をより高感度・高精度に測定できるキットの開発に取り組み、製品化させてきました。
それから数年が経ち、Per Rosénと Pia Bryngelhed(私の子供たちです)が会社の運営に携わるようになりました。 ふたりは効率のよい製品開発や製品製造、品質管理のための専門知識を習得していきました。 現在、Piaは品質管理責任者、Perは常務取締役(CEO)を務めています。 私たちは自分たちのペースで、長年に渡って成長してきました。これが一貫したパフォーマンスを維持するに役立っています。

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Rossixという社名の由来を教えて下さい。

Rossix社ロゴ

Rosは私の氏名(Steffen Rosén)のファミリーネームに由来しています。 そして“ix”はフランスの有名な漫画 “Asterix”の主人公Asterixにちなんでいます。 この漫画は紀元前50年頃のガリア(フランスの雅称)が舞台で、Asterixはローマ軍からガリア領を守る小さなグループの賢い指導者です。 -ixというのは「ガリアっぽい」接尾語でして、Chromogenixの社名にも入っているので、不屈の精神の象徴として私の会社名にも入れることにしました。

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製品開発プロセスついてのお話を聞かせて下さい。

血液凝固因子の活性測定キット ROX シリーズ
ROX シリーズは測定対象の活性を正確に測定するため、適切なバッファー、酵素、阻害物質がキットに含まれており、カスケード反応中の対象因子の活性測定に最適化されています。これにより、血漿などの試料における対象酵素の正確な活性測定が可能です。

Rossix社キットラインナップ
製品開発秘話

Rossixを設立してからの数年間は、製品開発をしようと決めていました。 幸運にも、Chromogenixで私の実験を支えてくれたMargareta Anderssonさんを、Rossixで雇うことができました。 私たちの最初の製品は「高い純度の合成リン脂質からなるエマルジョン」でした。 前職での経験を活かした製造ノウハウと、ちょっとしたコツで、トロンビン形成試験(TGT)やNon-activated Partial Thromboplastin Time(NAPTT)の測定といった 止血研究分野に最適なリン脂質を製造することができました。


製品開発秘話

Rossixが大きく前進したのは2007年のことです。私の子供たちPerとPiaがRossixで働き始めました。 ふたりとも学術的な教育を受けており、製品開発をスタートできる可能性を秘めていました。 最初のキット開発・製造プロジェクトがchromogenic FⅨキットとなったことは偶然ではありません。 製薬会社から問い合わせを受けていたので、脳内“マイリスト”のなかに初期段階から入っていたのです。 しかし90年代はAPCレジスタンス(活性化プロテインC抵抗性)や新しいヘパリンキットなどに注目が集まっていたため、優先順位を高く設定することができませんでした。

Rox Factor IX Kitの開発は優先順位をあげて行いました。 血漿中のFⅨ活性が0.02IU/mL(2%)以下であるような非常に低値の場合には、多くのOne-stage clotting methodが信頼できず、血友病B(FⅨの凝固活性の欠損が特徴)の診断を困難にしていることを私たちは熟知していました。 そこで、FⅨプロジェクトの目標の1つを血漿中のFⅨ活性が非常に低いレベルであっても、高感度で良い精度を達成することに設定し、見事にこの目標を達成しました。


製品開発秘話

Rox Factor XIa Kitの開発のきっかけは、2010年のこと。 異なる2つのバッチの免疫グロブリン製剤を用いて免疫グロブリン静注療法(IVIG)を受けた患者が、静脈血栓症(静脈に血の塊ができる症状)を発症したという複数の症例が報告されたことがきっかけでした。 調査の結果、製剤の2つのバッチには、FXIaが混入していたことが原因として考えられると結論づけられました。 なぜ混入を許したかというと、NAPTT(Non-activated Partial Thromboplastin Time)では、製剤中に存在する極めて低レベルなFXIaを見逃してしまったからです。この検出試験が感度不足だったのです。 私たちはFⅨ Kit開発で得たノウハウがありましたので、類似したアプローチでFⅨaの高感度検出キットも開発することに決めました。 NAPTTの感度よりもはるかに低レベルで高感度に精度よく測定できるだけでなく、マトリックス干渉を抑えるために段階希釈した試料でも測定できることをコンセプトとしました。 きわめて低濃度のFⅨaが測定できれば、製剤の精製ステップの各段階で、正確に混入の有無を評価できるようになります。 開発のために多くの時間を費やした結果、私たちはFⅨa Kitを完成することができました。このキットはNAPPT試験よりも50倍近く低い活性でも測定できるものです。


製品開発秘話

私たちが開発した最新の製品はRox Factor Ⅷ Kitになります。 Coatest FⅧ kitは性能が良いため、リリースされてから35年以上も使用されていますが、自動化装置で使用するには少し扱いに難があります。 ほかのChromogenic FⅧ Kitはもっと使い勝手は良いのですが、私たちが独自に調査したところ、いくつか弱点も発見されたため、独自の次世代型Chromogenic FⅧ Kitsの開発をスタートしました。 私たちが目指したのは「試薬の安定性」です。アッセイするときに反応試薬を再構成しますが、再構成後でも高い安定性を保てることを目標としました。 また高感度に測定できることや、もっとも重要である高い精度(すべての測定範囲でスタンダードが適切に直線性を示すこと)も重視し、製品開発を進めてきました。そして2018年のリリースに至りました。

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製品開発以外で、Rossixが関与している研究などはありますか。

製品開発に並行して、私たちはバイオテクノロジー企業へのコンサルティングを定期的に行っています。 またFⅧ, FⅨ, FⅨa、FXIaについてのWHO(世界保健機関)国際標準品の検定に参加することもあります。 また近年はFⅧアッセイ、FⅨアッセイについて、様々なOne-stage clotting method とChromogenic method の相違点に関する知見を深めるための研究に時間を費やしています。 血友病治療にはFⅧやFⅨを投与して補うという治療が行われますが、従来は患者さんが週に何回も定期的な補充をする必要がありました。 しかし近年では血液凝固因子の血中半減期が延長された次世代型の製剤が登場してきています。 私たちは、そのような新しい製剤の測定に関して研究しています。この仕事は大変やりがいのあるもので、研究の結果、いくつかのケースで測定結果の不一致を起こす根本的な原因を突き止めることもできています。

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成功のために重要なことは何でしょうか。

私は、成功のためには「献身的に情熱を注ぐこと(devotion)」が重要だと信じています。高い能力はもちろんのことですが、 強い忍耐力をもって没頭しなければ、成功へと到達することは困難です。 製品製造においては、すべての工程で高い品質レベルを保つことが求められます。言い換えれば「細心の注意を払う意を払うこと」です。これが製造バッチで不良品が出ないようにすること、ひいてはお客様からのクレームを最小限化することに繋がります。もうひとつ重要なことは、高いサービスレベルを提供することであり、これは「お客様への敬意」を示すことにほかなりません。

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日本に来られたことはありますか。

Kabi Diagnostica/Chromogenixで過ごした22年の間に、私は何度か日本を訪れました。 私は血液凝固に関する講義を行ったり、日本の有名な血液学の研究室をいくつか訪問したりしました。 お会いした先生方とはその後も定期的にコングレスで再開し、刺激的な話をしました。
レクチャーツアーでは、京都、大阪、新潟にも行くことができ、とても楽しい思い出となりました。 最後に訪れたのは2002年ですが、その時は埼玉スタジアムでサッカーの世界選手権のスウェーデン対イギリス戦を観戦しましたよ。
また日本のバイクに純粋な興味を持っていた私は、時間を見つけてはホンダ博物館を訪れ、1960年代の有名なレーシングバイクをすべて見て回りました。 当時、ホンダは小型および中型のチャンピオンシップクラスでレースを支配していました(したがって、私が1970年に製造された2台のホンダCB350のオーナー兼ライダーであることは驚くことではありません)。 最近では、2011年に美しい街 京都で開催された第23回ISTH総会に娘のPiaと私で参加しました。
日本を訪れたことによる「生涯にわたる影響」のひとつとして、私は日本食が大好きで、いつも寿司などを食べています。実際、私たちの街Mölndalには3軒の寿司屋があります。


Dr. Rosénがお持ちの日本製バイク

Dr. Rosénが "my two jewels..."と称して大切にされているバイクのお写真(Honda CB350)
1970年代製バイクで、赤色のバイクは完全オリジナル状態、水色のバイクはいわゆる「カフェレーサー」。 「カフェレーサー」という名称はイギリスに由来しており、TriumphやNorton、BSAのバイクに乗っている若者たちが、地元のカフェの前に停めてあるバイクをより魅力的にするために、スポーティな改造をしたことに関連しているのだそう。


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Mölndal (メンダール)はどのような街なのでしょうか。

メンダール(人口70,000人)は、スウェーデン南西部のヴェステルゴートランド郡に位置する都市で、ヴェストラ・ゴータランド地域に属しています。 メンダールは、スウェーデン第2の都市であるヨーテボリ(人口60万人)の郊外にあり、重要な海港都市でもあります。 いくつかの滝がある川があり、そこから水のエネルギーを採取して電気に変え、川沿いの工場を動かしていたからです。 Rossix社は、製薬会社AstraZeneca社の大規模な研究開発拠点の近くに位置しています。 この拠点では、初期のベータブロッカーや、胃潰瘍の治療薬の大ヒット商品Omeprazole(Losec/Nexium)が開発されました。 現在、ライフサイエンスとITを中心とした大規模なエリアが私たちの近隣に建設中で、約5,000人の従業員が働く予定です。

メンダールの近くには、美しい自然を満喫できるリゾート地がいくつかあり、また、便利な距離には多くのビーチがあります。 フェリーを使ってさまざまな島に行くのも人気があり、1時間以内で行くことができます。 西海岸に沿って少し北上すると、海岸や他の島々の自然は著しく異なり、海岸には花崗岩の裸石が広がっていて、この地域は観光客に人気があります。 春はたくさんの花が咲き乱れ、白樺が薄緑色の若葉を茂らせてとても美しいので、観光客が最も好む季節です。

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日本の研究者に向けてメッセージをお願いいたします。

Rossix社は、フナコシを通じて日本国内に製品をお届けし、そして日本の研究機関と刺激的なコンタクトを取れることを楽しみにしています。

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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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