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千葉工業大学 先進工学部 生命科学科 RNA工学研究室 坂本泰一 教授

【研究室でインタビュー】
千葉工業大学 先進工学部 生命科学科 RNA工学研究室 坂本泰一 教授

掲載日情報:2018/10/15 現在Webページ番号:65170

研究テーマ、ご自身のエピソードについて語っていただきました!

研究室でインタビュー

JR 津田沼駅南口を出ると目の前にとても高い建物が2つ、目に入ります。手前にある建物に、今回訪問した千葉工業大学 先進工学部 生命科学科 坂本 泰一 教授のRNA 工学研究室があります。

研究室でインタビュー



現在の研究テーマ(機能性の人工核酸の創成)に興味を持った理由を教えて下さい。

私が大学院生の時、先輩が研究室のゼミでSELEX 法*1 についての論文を発表したのを聞いたのがきっかけです。こういう研究手法もあるのだなと思いました。私は構造生物学の研究室にいて、新しい生体分子を創り出すには構造が必要だと思っていたのですが、試験管内で分子進化をすれば、目的の人工核酸を創り出すことができることに感動しました。
*1 SELEX: Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment(試験管内進化)



RNA アプタマーを用いてバイオ医薬品を目指しているそうですが、どういった機能を持ったものを探していますか?

う~ん。バイオ医薬品に興味はありますが、その前に基礎的な部分というか。RNA アプタマーの特異性と親和性が非常に高いことに興味があって、どういう仕組みで特異性や親和性が高いのかという部分が分かれば、これからの医薬品開発にも役立つと思っています。機能といっても、基本的には「くっつくこと」だけ、なんですけどね(笑)。くっつき方は何にくっつくかによって変わってきますし、そのターゲットも、くっつきやすいタンパク質とそうでないタンパク質があると思います。どういうタンパク質をターゲットにするといいかも分かってくると良いなと思います。



初歩的な質問ですが、どれくらいの結合能があれば「これはアプタマーだ」と言えるのでしょうか?

それは非常に大切な問題なのですが……、基準は決まってはいないのです。ただ、医薬品として使うことを考えると強ければ強いほど良いわけで、Kd にしてnM オーダーくらい必要だと思いますが、中にはそこまで強くなくても細胞実験で効果があると報告されているものもあるので、ターゲットによるのかもしれません。
私の研究室でもバイオ医薬品の候補は出てきてはいますが、医薬品としては、細胞や動物で上手くいくことが必要になってきます。それは共同研究先でやってもらっています。それとは別に、ここでは、NMR、ITC、SPR*2 を用いて物理化学的解析を行っています。
*2NMR:構造解析、ITC:熱力学的な解析、SPR:速度論的な解析

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今までに「これは!」という発見はありますか?

私が発表した中では「アプタマーは決して、静電的な結合だけでタンパク質と結合しているのではなくて、タンパク質の形も上手く認識している」という結果は、よく論文で引用していただいていますが。一般的に見ればそんなに大きな発見をしたという訳ではないです。でも、研究ってルーチンではないところは、すべて新しい発見じゃないですか。



先生ご自身のことについてお聞きします。サイエンスに興味を持つようになったのはいつ頃でしたか?

大学4 年生の時に研究室に入ってからです。それまでは、大学の講義は、ほとんど興味がありませんでした。というか、よく覚えていない(笑)。研究室に入ってからは自分の実験によって、新しいことがわかるのが楽しく、たくさん実験をしました。



実験で手を動かすようになってから楽しくなっていったのですね。どのような卒論内容で研究にはまっていったのでしょうか?

そのときは、非天然型のアミノ酸をタンパク質に組み込ませる研究をしていました。化学合成ではなく大腸菌を使っていました。今は技術がだいぶ進歩して、様々な手法で天然には存在しないタンパク質が作れるようになっているのですが、私が学生の頃はまだ世界で初めて論文が出た頃で、自分がそういう最先端のことをやっているという面での楽しさもあったように思います。



博士課程から研究テーマがRNA の研究に変わったそうですね?

そうなんです、博士課程の時期が一番大変でした。修士課程の時は、優秀な先輩がたくさんいて、先輩方の作ったレールの上で、一生懸命実験さえすれば良い結果が得られました。その時は先輩から、いくらでも教わることができた。宮澤辰雄先生*3が異動されたので、博士課程で違う研究室に移りました。初めて、自分自身で研究を立ち上げるところから始めたのですが、それまで得られていた結果は、自分の実力によるものではないことを思い知りました。博士課程では、あらゆる実験で躓いて、かなり自信を失い、研究者をあきらめることを何度も考えました。ただ、宮澤先生の奥様から頂いた詩集に勇気を貰ったり、周りにも恵まれて苦難を乗り切ることができました。その時の苦労の経験は、今の研究に役立っていると思っています。
*3学部、修士課程時の恩師。東京大学理学部生物化学科で生体物質のNMR 研究を行い、日本の構造生物学をリードした。定年退官後、横浜国立大学に赴任。



詩集のプレゼントなんて素敵ですね、どのような詩集だったのですか?

サミュエル・ウルマンの詩集『青春』です。その一節「青春とは臆病さを退ける勇気、安きにつく気持ちを振り捨てる冒険心を意味する」に勇気を貰いました。

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研究に携わっていて嬉しかったことはなんですか?

指導した学生の活躍を聞いた時です。実は千葉工大に来る前は企業の研究所にお世話になっていたのですが、企業なので学生を育てることはあまり無いじゃないですか。やっぱりそこが自分には合わないかなと思いました。私は優秀な研究者ではないので、たくさんの人が研究に携わるようになると、世の中の研究は進んでいくのではないかと考えています。



最後に学生・若手研究者にメッセージをお願いします。

自分のおもしろいことを一生懸命やってもらいたいと思います。その中でも研究に興味を持ってもらえれば、もちろんうれしいです。



研究の楽しさが分かる学生が増えるといいですね。
本日はお忙しい中ありがとうございました。



千葉工業大学 先進工学部 生命科学科 RNA 工学研究室

RNA の立体構造情報および進化分子工学を利用して、新しいRNA 医薬品、新しいRNA 材料を開発することを目指している研究室です。いろいろな研究者の方と交流して、共同研究したり、情報交換したりしたいと思っています。大学院生も募集中です。
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