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土壌からの高純度ゲノムDNA抽出キット E. Z. N. A. Soil DNA Kit

掲載日情報:2021/06/01 現在Webページ番号:2557

フミン酸などのPCR阻害物質を含む土壌試料から、高純度のゲノムDNAを抽出するキットです。独自の方法により、様々な環境試料から有機溶媒を用いずに、抽出・精製することができます。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。


土壌試料からのDNA収量の比較

図1. 土壌試料からのDNA収量の比較
200 mgの土壌に50 µlのZymoBIOMICS Microbial Community Standard(ZymoResearch社)を添加した試料から、各キットの推奨プロトコルによりDNAを抽出した。DNAの溶出は、キットに含まれる溶出液100 µlで行った。得られたDNAの収量は蛍光法にて定量した。それぞれ3回の実験を行ったところ、本キットでは安定して良好な収量が得られたが、A社キットは変動が大きく、また収量が劣っていた。
本キットを使用して土壌試料から精製したDNAは、他社キットよりも再現性および収量が高いことが示された。

用いたキット Ct値 ΔCt
1:10希釈時 1:100希釈時
A社キット 22.47 25.83 3.36
22.85 26.26 3.41
23.52 27.10 3.58
A社キットの平均値 22.95
Omega Bio-tek社キット 22.25 25.04 2.79
22.04 25.82 3.78
22.40 26.38 3.98
Omega Bio-tek社
キットの平均値
22.23
No template control 39.65

表1. 土壌試料から抽出したDNAを用いてのPCR
図1で得られたDNAを10倍および100倍希釈した試料を用い、20μlの反応系でSYBR Greenを用いたqPCRを行った。
本キット、A社キットいずれもPCR阻害物質が効率的に除去されており、PCRが問題なく行われていることが示された。
また、得られたCt(Threshold Cycle)値から、本キットのDNA収率が優れていることが示された。

特長

  • フミン酸などのPCR阻害物質やタンパク質、多糖類等を含まない高品質なゲノムDNAを分離・精製できます。
  • 粘土質、砂質、泥炭質、石灰質、ローム質などの様々な土壌試料中に生息する、グラム陽性およびグラム陰性の細菌、真菌、酵母、藻類などから信頼性・再現性の高いゲノムDNAを分離・精製できます。
  • 破砕用ガラスビーズが2 mlチューブにあらかじめ充填されており、簡便に抽出を行えます。
  • 得られたDNAはPCR, サザンブロッティング、制限酵素処理、NGS解析など、ほとんどの下流のアプリケーションに使用することができます。
  • ~250 mgの土壌試料から1時間、~1 gの土壌試料から2.5時間でゲノムDNAが得られます。

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操作方法概略

操作方法概略

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使用例

各種バクテリアからのDNA収率の比較

図2. グラム陽性菌およびグラム陰性菌からのDNA収量の比較
200 mgの土壌にグラム陽性菌とグラム陰性菌の培養液 0.5 mlをそれぞれ添加した試料から、各キットの推奨プロトコルにてDNAを抽出した。DNAの溶出は、キットに含まれる溶出液100 µlで行った。
細胞壁が厚いグラム陽性菌の場合、A社キットは本キットよりも劣る結果となり、本キットがグラム陽性菌に対して特に優れた性能を発揮することが示された。


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アプリケーションノート:土壌試料からのDNA抽出について他社製品との比較

アプリケーションノート:土壌試料からのDNA抽出について他社製品との比較 (クリックで展開します)

はじめに

土壌中のDNAを分子レベルで解析することは、土壌中に存在するバクテリアを検出し、バクテリアの多様性を研究するための直接的な解決策となります。しかし、土壌からのDNA抽出は、フミン酸のようなDNA抽出プロセスを阻害し、かつ下流のアプリケーションを妨げる物質が多く含まれているため困難な場合が多くなります。理想的なDNA抽出法は、阻害物質を効果的に除去し、DNA収量を最大化するものでなければなりません。本アプリケーションノートの主たる目的は、Omega Bio-tek社のE.Z.N.A. Soil DNA Kit(#D5625)とA社のSoil DNA Isolation Kitの性能を、DNAの収量と品質の点で比較し、さらにリアルタイムPCRを用いた検出により、増幅能力と感度の点で比較することです。


材料と方法

200 mgの土壌に10 μlのZymoBIOMICS Microbial Community Standard(ZymoResearch社)を添加した試料から、E.Z.N.A. Soil DNA Kit(Omega Bio-tek社)と DNA Isolation Kit(A社)各キットの推奨プロトコルによりDNAを抽出した。ZymoBIOMICS Microbial Community Standardは、10種類の微生物(易溶解性のグラム陰性菌3種類、難溶解性のグラム陽性菌5種類、難溶解性の酵母2種類)で構成されており、2つのキットの性能を比較する際のベンチマークとなる。

土壌試料はビーズ式細胞破砕装置Omni Bead Ruptor 24(Omni International社)を用いてホモジナイズし、それぞれのキットのメーカー推奨プロトコルに従って分離を行った(三重試験)。操作時間は、A社キットの抽出が約60分、Omega Bio-tek社キットの抽出が約70分であり、使い勝手は同等だった。

精製されたDNAは、各キットに付属した溶出バッファー100μlで溶出し、QuantiFluor dsDNA System(Promega社)を用いて定量した。両キットから得られた精製DNAの品質は、精製DNAの10倍、100倍、1,000倍希釈液について、バクテリア16S rRNA遺伝子特異的プライマーを用いたリアルタイムPCRで分析した。さらに、Listeria monocytogenes(グラム陽性菌)とSaccharomyces cerevisiae(酵母)の2つの難溶解性の微生物について、Listeria特異的プライマーまたはSaccharomyces特異的プライマーを用いて、10倍および100倍希釈液中の相対的な存在量を調べた。具体的には、BrilliantⅢ 2× SYBR(Agilent Technologies社)をマスターミックスとして使用し、ABI 7900の標準プロトコルに従い、標的遺伝子に対するプライマー、適切に希釈したテンプレートDNA 2 μlを使用して、総容量20μlの反応系でqPCRをセットアップした。


結果と考察

ZymoBIOMICS Microbial Community Standardを添加した土壌試料から、Omega Bio-tek社キットとA社キットを用いてそれぞれ得られたDNAの収量を図3に示す。Omega Bio-tek社キットの性能はA社のキットに比べて有意に優れており、100μlの最終容量で溶出した場合、収量が40%増加した(8.1μg vs. 5.7μg)(p < 0.05;テューキーの post-hoc analysisによる)。

土壌試料からのDNA収率平均値の比較

図3. 土壌試料からのDNA収量の比較
Omega Bio-tek社キット(緑色)、A社キット(水色)を用い、ビーズ式細胞破砕装置で破砕・抽出した試料からDNAを分離した。縦軸は収量(μg, n=3の平均)を示す。両者間は p<0.05 で有意差があった。



各抽出液から得られたDNAの品質は、qPCRで得られたCt(Threshold Cycle)値に基づいて判定した。表2は、連続希釈した精製DNAを試料として、バクテリア16S rRNA遺伝子特異的プライマーを用いたqPCRで得られた平均Ct値を示している。Omega Bio-tek社キットで得られた精製DNAでは、Ct値がわずかに小さく(~0.5)なった。


用いたキット Ct値
1:10希釈時 1:100希釈時 1:1,000希釈時
Omega Bio-tek社キット 14.93 17.42 21.46
A社キット 15.34 18.22 21.97

表2. 連続希釈した精製DNAを試料として、バクテリア16S rRNA遺伝子特異的プライマーを用いたqPCRで得られた平均Ct値


図4は、10倍および100倍に希釈した精製DNAをテンプレートとして、ListeriaおよびSaccharomyces特異的プライマーを用いてPCRを行った際に得られた平均Ct値を示す。Listeria monocytogenesおよびSaccharomyces cerevisiaeは、いずれも難溶解性であるが、Omega Bio-tek社キットのCt値がA社のCt値よりも有意に小さいことを示す結果となった(p<0.05;テューキーの post-hoc analysisによる)。
グラム陽性菌であるListeriaでのCt値は1サイクル小さく、酵母SaccharomycesのCt値はほぼ3サイクル小さかった。つまり、A社キットと比較して、Omega Bio-tek社キットはListeriaSaccharomycesからの収量がそれぞれ2倍および8倍高かった。段階希釈した試料間のΔCtは、両キットとも同程度であった(Listeriaでは~3.1、Saccharomycesでは~3.4)。


土壌試料から得られたDNAを用いたqPCRでのCt値の比較

図4. 難溶解性の微生物から得られたDNAを用いたqPCRの比較
Omega Bio-tek社キット(緑色)、A社キット(水色)を用いて精製したDNAを、ListeriaおよびSaccharomyces特異的プライマーで増幅して、平均Ct値を得たところ、両社製品間で有意差が認められた。



これらのデータは、Omega Bio-tek社のキットが、精製DNAからPCR阻害物質を除去する点ではA社キットと同様に優れた性能を有し、収率では勝っていることを示している。qPCRで得られたCt値は、得られた収量と一致しており、Omega Bio-tek社のE.Z.N.A. Soil DNA KitはA社製品よりも優位であった。


結論

Omega Bio-tek社のキットは、A社キットと比べて有意に高い収率で土壌試料からDNAを抽出することができ、難溶解性のバクテリアの場合でも同様に高性能を示した。Omega Bio-tek社キットは、PCR阻害物質を効果的に除去できた。これは、Omega Bio-tek社キットが分離したDNAが、A社キットによるDNAよりも一貫して早く増幅され、Ct値も小さいことで示される。

さらにCt値が小さいことは、Omega Bio-tek社キットを用いて得られたDNAの品質が高いことを示している。以上の結果から、Omega Bio-tek 社のE.Z.N.A. Soil DNA Kitは、qPCRや次世代シークエンシングなどの様々な下流のアプリケーションに対応した、高収量・高品質のDNAを抽出できるキットであることが示された。




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キット内容

  • HiBind DNA mini column
  • 2 ml Collection tube
  • Disruptor tube
  • SLX-Mlus buffer
  • DS buffer
  • P2 buffer
  • cHTR reagent
  • XP1 buffer
  • HBC buffer
  • DNA wash buffer
  • Elution buffer

別途必要な試薬・装置類については、製品マニュアルをご確認下さい。


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価格

[在庫・価格 :2024年04月23日 18時35分現在]

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