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革新的なタンパク質S-パルミトイル化修飾解析キット RapidSPALM, Protein S-Palmitoylation Detection Kit

掲載日情報:2022/09/15 現在Webページ番号:68420

RapidSPALM(ラピズパーム), Protein S-Palmitoylation Detection Kitは、タンパク質の可逆的脂質翻訳後修飾として知られるS-パルミトイル化修飾を多面的に解析できるキットです。化学的特徴の乏しいS-パルミトイル基を独自の多機能タグに変換することで、相対定量、修飾個数判定、精製・同定、修飾率算定ができます。対象試料として動物組織・培養細胞および植物組織と広く適用でき、独自開発のプロトコルにより従来技術に比べ簡便、迅速かつ高感度にS-パルミトイル化修飾を検出できるため、大幅な実験労力・時間削減が可能です。
本キットのアプリケーションデータについてはこちらをご覧下さい。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。


RapidSPALM-Kit概要
RapidSPALM-Kit特長

タンパク質S-パルミトイル化修飾とは?

タンパク質に脂質が付加する「脂質翻訳後修飾(Lipidation)」には、S-パルミトイル化修飾(S-Palmitoylation)、N-ミリストイル化修飾(N-Myristoylation)、S-プレニル化修飾(S-Prenylation)が主に挙げられます。これら脂質翻訳後修飾は共通して、タンパク質の膜親和性を向上する働きがあると考えられており、膜輸送を担う修飾とされています。N-ミリストイル化およびS-プレニル化修飾は不可逆的な翻訳後修飾であるのに対し、S-パルミトイル化修飾は酵素依存的な可逆的翻訳後修飾として知られ、シグナル伝達や膜タンパク質の輸送など様々なタンパク質の機能制御に関わっていることが報告されています。
S-パルミトイル化修飾は別名S-アシル化修飾(S-Acylation)とも呼ばれ、タンパク質中のシステイン側鎖のチオールに対し、主に炭素数16のパルミチン酸がチオエステル結合で付加する修飾で、タンパク質アシル転移酵素zDHHCファミリーおよび脱パルミトイル化酵素により可逆的に付与・脱離を繰り返すと考えられています。これまでRasファミリーシグナル伝達タンパク質、Srcファミリータンパク質(Srcを除く)、Gタンパク質αサブユニットおよび各種レセプター・イオンチャネルなどの膜タンパク質でS-パルミトイル化修飾が発見されています。また、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を含む様々なウィルスタンパク質も宿主細胞にてS-パルミトイル化修飾を受けることが明らかになっており、S-パルミトイル化修飾はウィルスタンパク質の機能発現に重要な役割を担っていることから、抗ウィルス創薬を志向した研究も盛んに行われています。


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タンパク質S-パルミトイル化修飾の解析方法は?

タンパク質S-パルミトイル化修飾は、これまで大きく2つの戦略(①代謝標識、②化学変換)で解析されてきました。いずれの手法もタンパク質S-パルミトイル化修飾研究の発展に大きく寄与していますが、手法により得られる知見が限定的、実験時間が長い、特異性が低いなどの課題がありました。本製品RapidSPALMは、化学変換戦略の1つで、この手法のみでさまざまな解析が可能です。


タンパク質S-パルミトイル化修飾の主な解析方法とその特長

戦略手法検出法わかること要する時間適用可能な試料課題点
代謝
標識
放射性同位体(3H)標識パルミチン酸
  • オートラジオグラフィー
  • 目的タンパク質のS-パルミトイル化修飾有無の判定
数日~数か月 培養細胞
  • 放射性物質取り扱い施設が必要
  • 感度が低く結果が得られるまでに時間がかかる
  • 他の修飾を検出している懸念あり
アルキンまたはアジド末端標識脂肪酸
  • クリックケミストリー
  • 目的タンパク質のS-パルミトイル化修飾有無の判定
  • 網羅的精製・同定
1~2日程度 培養細胞
  • 他の代謝物を検出している懸念あり
  • 組織に適用できない
化学
変換
ABE
(Acyl-Biotin Exchange)
  • アビジンビーズ精製
  • 網羅的精製・同定
1~2日程度 組織、培養細胞、植物など
  • 特異性に懸念あり
APEGS
(Acyl-PEGyl Exchange Gel Shift)
  • ゲルシフトアッセイ
  • 目的タンパク質のS-パルミトイル化修飾個数の判定
1~2日程度 組織、培養細胞、植物など
  • 特異性に懸念あり
RapidSPALM
(Rapid Substitution of Protein S-Acylation for Multifunctional-tag)
  • 蛍光アッセイ
  • ゲルシフトアッセイ
  • アフィニティビーズ精製
  • 試料間のS-パルミトイル化修飾総量の比較定量
  • 目的タンパク質のS-パルミトイル化修飾個数の判定
  • 網羅的精製・同定
2~3時間 組織、培養細胞、植物など


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RapidSPALMで何ができるの?

BDL社は、タンパク質のS-パルミトイル基(以下、S-アシル基を含む)を独自の多機能タグ(Multifunctional-tag、以下MfTagと略)に、わずか2時間の短時間かつ高選択的に交換する新規化学変換手法Rapid Substitution of Protein S-Acylation for Multifunctional-tag(RapidSPALM、ラピズパーム)を開発しました。MfTagに変換することで、下記の解析が可能です。

  1. 蛍光強度測定による複数試料間の修飾タンパク質総量の相対比較
  2. SDS-PAGEにおける修飾タンパク質バンドの蛍光検出
  3. ウエスタンブロットによる個々のタンパク質の修飾個数の判定
  4. アフィニティカラムによる修飾タンパク質の網羅的精製と解析
  5. アフィニティカラム精製後のウェスタンブロットによる個々のタンパク質の修飾率の算定


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RapidSPALMの原理

本製品RapidSPALMは、反応キット部分(#F017A)と精製キット部分(#F017B)からなります。まず、反応キットを用いて任意の試料中(培養細胞、動物組織、植物など)のS-パルミトイル化修飾を独自のMfTagに変換します。本キットのMfTagは分子量約5 kDaの単一分子量の高分子構造体をベースに黄色蛍光基(yFL)およびアフィニティ精製用のHook基が付加されています。Hook基は精製キットに含まれるLoopアフィニティカラムにより迅速かつ簡便、そして高純度で精製することができ、精製終了後は還元剤により簡単にMfTagを除去することができます。

RapidSPALMの構成内容概要

図をクリックすると拡大します(拡大図

RapidSPALMの構成内容概要


RapidSPALM反応キット部分の原理

RapidSPALM反応キット部分では段階的な化学修飾反応により、S-パルミトイル基をMfTagに変換します。RapidSPALMはS-パルミトイル化修飾検出手法として知られるAcyl-Biotin Exchange(ABE)法やAcyl-PEGyl Exchange Gel Shift(APEGS)法を基に独自に見出した試薬類およびプロトコルを採用することで、特異性の向上、反応工程の短縮および感度向上を実現しました。


<i><sup>RapidS</sup></i>PALMの変換反応の概要

図をクリックすると拡大します(拡大図

RapidSPALMの変換反応の概要

① タンパク質変性処理
各化学修飾反応の効率を上げるため、タンパク質を強力な変性剤と加熱により変性させます。

② 還元処理
タンパク質中のジスルフィド結合を還元し、フリーのシステインにします。

③ フリーシステインのブロッキング
S-パルミトイル化修飾に無関係なフリーシステインを、システイン特異的修飾試薬でブロッキングします。

S-パルミトイル基の選択的切断
S-パルミトイル基-システイン間のチオエステル結合を高活性ヒドロキシルアミン誘導体(high performance hydroxylamine、以下hpHAと略)により切断します。この際に、特異性コントロールとしてhpHA未処理(Tris処理)を用意します。

⑤ MfTagの標識反応
hpHAにより遊離したシステインにMfTagを標識します。③のブロッキングが不十分の場合、hpHA未処理の試料においてもMfTagが標識されるため、hpHA未処理の試料を並行して用意し、特異性判定に使用します。また、ネガティブコントロールとしてMfTag標識試薬未処理の試料も用意します。

⑥ 脱塩処理
クロロホルムメタノール沈殿法(CMppt)により、未反応試薬の除去およびタンパク質成分の粗精製を行います。

上記のプロセスを経て、1つの試料に対し2種類のネガティブコントロールを含む3種類の処理hpHA(-)/MfTag(-)hpHA(-)/MfTag(+)およびhpHA(+)/MfTag(+)を調製します。


RapidSPALM精製キット部分の原理

RapidSPALM精製キットHook&Loopアフィニティ精製は非タンパク質性の低分子間相互作用を利用しています。非タンパク質性の相互作用のため、完全変性条件下での結合が可能で、アフィニティビーズ自体への非特異吸着が非常に低く抑えられます。また、全工程スピンカラムでの提供のため、カラムへの溶液添加とスピンダウンの繰り返しだけで簡便に精製が行えます。


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RapidSPALMと従来手法(ABE)の作業工程の比較

従来手法(ABE)は一般的にS-パルミトイル基とビオチンの交換反応に約1日、精製ステップに数時間程度必要とされています。RapidSPALMは、反応キット部分が約2時間、精製キット部分が約1時間で完結することができます。


従来手法ABEとRapidSPALMの作業時間の比較

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従来手法ABEと本キットRapidSPALMの作業時間の比較


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特長

  • 従来法に比べて簡便で、反応キットは約2時間、精製キットは約1時間で操作を完了できます
  • 本製品のみで幅広いアプリケーションを実施できます。
  • 培養細胞、組織、植物片など試料を選ばず適用できます。
  • アフィニティ精製のステップは、スピンカラム形式のため簡単な操作のみで実施できます。
  • 独自試薬と反応工程短縮により、従来手法に比べて感度と特異性が向上しています。

作業時間は1アッセイの場合の目安です。


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アプリケーション

  • 蛍光アッセイによる試料間のS-パルミトイル化修飾総量の相対比較
  • 蛍光イメージャーによるSDS-PAGEゲル中のS-パルミトイル化タンパク質バンドの検出
  • ゲルシフトアッセイによる目的タンパク質のS-パルミトイル化修飾個数の判定
  • 精製キットによるS-パルミトイル化タンパク質の網羅的精製と検出
  • 精製キットによる目的タンパク質のS-パルミトイル化修飾判定と修飾割合推定

RapidSPALMの各種アプリケーションの概略

図をクリックすると拡大します(拡大図

RapidSPALMの各種アプリケーションの概略


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キットの選択方法

本製品RapidSPALMは、反応キット(#F017A)と精製キット(#F017B)からなります。RapidSPALM実施のためには、反応キットが必須で、精製キットはオプションになります。以下の表をご確認の上、目的の解析に必要な場合は、精製キットを併せてご購入下さい。
また、RapidSPALMにおいて、SDS-PAGE実施時の還元非還元は重要なため、目的に応じた推奨条件をよくご確認下さい。
精製キットだけではRapidSPALM実験はできませんのでご注意下さい。
各種アプリケーションデータについてはこちらをご覧下さい。

目 的検出方法必要なキット
試料間のS-パルミトイル化修飾総量を比較したい 蛍光アッセイ
(蛍光分光光度計による蛍光強度測定)
反応キット
SDS-PAGEゲル内のS-パルミトイル化タンパク質のバンドを検出したい SDS-PAGEゲルの蛍光検出
非還元SDS-PAGE/蛍光イメージャー検出)
反応キット
目的タンパク質のS-パルミトイル基の数を推定したい ゲルシフトアッセイ
非還元SDS-PAGE/ウェスタンブロット)
反応キット
S-パルミトイル化タンパク質を網羅的に精製したい アフィニティ精製
還元SDS-PAGE/銀染色
反応キット
精製キット
目的タンパク質がS-パルミトイル化修飾されるか評価したい アフィニティ精製
還元SDS-PAGE/ウェスタンブロット
反応キット
精製キット
目的タンパク質のS-パルミトイル化修飾割合を算定したい アフィニティ精製
還元および非還元SDS-PAGE/ウエスタンブロット
反応キット
精製キット

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キットの種類

キットの種類商品コード品 名包 装
反応キットF017ARapidSPALM, Protein S-Palmitoylation Detection Kit12 assays
精製キットF017BRapidSPALM, Additional Components for Affinity Purification24 columns

反応キットの1 assayは、1試料から2種類のネガティブコントロールを含む3つの処理-/--/++/+)の調製できる分の試薬が含まれています。
精製キット1つの試料につきネガティブコントロールを含む2つの処理-/++/+)の実験実施を推奨するため、24 columnsで12アッセイ分に相当します。
各製品のキット内容は製品マニュアル(下記価格表中のPDF)をご確認下さい。


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価格

[在庫・価格 :2024年04月28日 00時00分現在]

※ 表示されている納期は弊社に在庫が無く、取り寄せた場合の納期目安となります。
詳細 商品名
  • 商品コード
  • メーカー
  • 包装
  • 価格
  • 在庫
  • 法規制等
納期 文献数
RapidSPALM, Protein S-Palmitoylation Detection Kit
2~3週間 ※ 表示されている納期は弊社に在庫がなく、取り寄せた場合の目安納期となります。 0
説明文
タンパク質S-パルミトイル化修飾(S-palmitoylation)を解析するキット。S-パルミトイル基を多機能タグに化学変換することで,相対定量,修飾個数判定が可能。また,別売品#F017Bと組み合わせることで,網羅的精製と目的タンパク質の同定・修飾割合算定ができる。
法規制等
保存条件 -20℃ 法規備考
掲載カタログ ニュース2023年8月合併号 p.42
ニュース2023年10月15日号 p.24

製品記事 バイオダイナミクス研究所 製品特集
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RapidSPALM, Additional Components for Affinity Purification
2~3週間 ※ 表示されている納期は弊社に在庫がなく、取り寄せた場合の目安納期となります。 0
説明文
タンパク質S-パルミトイル化修飾(S-palmitoylation)を解析するキット(#F017A)の精製用追加コンポーネント。#F017Aで調製した試料に対して使用することで,S-パルミトイル化タンパク質を迅速に精製でき,網羅的精製と目的タンパク質の同定・修飾割合算定に利用できる。注:本製品#F017Bのみでは実験できません。#F017Aと組み合わせる必要があります。
法規制等
保存条件 4℃ 法規備考
掲載カタログ ニュース2023年10月15日号 p.24

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[在庫・価格 :2024年04月28日 00時00分現在]

※ 表示されている納期は弊社に在庫が無く、取り寄せた場合の納期目安となります。

RapidSPALM, Protein S-Palmitoylation Detection Kit

文献数: 0

説明文 タンパク質S-パルミトイル化修飾(S-palmitoylation)を解析するキット。S-パルミトイル基を多機能タグに化学変換することで,相対定量,修飾個数判定が可能。また,別売品#F017Bと組み合わせることで,網羅的精製と目的タンパク質の同定・修飾割合算定ができる。
法規制等
保存条件 -20℃ 法規備考
掲載カタログ ニュース2023年8月合併号 p.42
ニュース2023年10月15日号 p.24

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RapidSPALM, Additional Components for Affinity Purification

文献数: 0

説明文 タンパク質S-パルミトイル化修飾(S-palmitoylation)を解析するキット(#F017A)の精製用追加コンポーネント。#F017Aで調製した試料に対して使用することで,S-パルミトイル化タンパク質を迅速に精製でき,網羅的精製と目的タンパク質の同定・修飾割合算定に利用できる。注:本製品#F017Bのみでは実験できません。#F017Aと組み合わせる必要があります。
法規制等
保存条件 4℃ 法規備考
掲載カタログ ニュース2023年10月15日号 p.24

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(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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