クロマチン構造の遺伝子発現制御解析に CLOuD9 Gene Expression Regulation Kit

哺乳動物細胞において、ゲノム中の任意の場所に可逆的かつ誘導性のクロマチンループ構造を形成させることができるキットです。キットにはdCas9-PYL1およびdCas9-ABIを細胞内において発現するためのレンチウイルスベクターが含まれています。これらのベクターに任意の標的部位に結合するgRNA配列を組み込んだ後、細胞に導入し、設定した標的部位に結合するdCas9融合遺伝子を発現させます。産生されたdCas9-PYL1およびdCas9-ABIは、誘導化試薬を添加することで結合し、クロマチンループ構造を形成します。クロマチン構造の動的変化による遺伝子発現の制御（亢進・抑制）の研究などに有用です。
※CLOuD9：Chromatin Loop Reorganization using CRISPR-dCas9

※ 本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。

本システムでは、Cas9に変異を導入しDNA切断活性を欠損させたもの（dCas9）を標的部位特異的なDNA結合タンパク質として利用します。黄色ブドウ球菌（Staphylococcus aureus）および化膿レンサ球菌（S. pyogenes）由来の2種類のdCas9を用いるため、それぞれに対応した配列のgRNAが使用でき、ゲノム中の任意の2ケ所を標的部位として設定できます。
設定した標的gRNA配列を組み込んだdCas9発現レンチウイルス2種類を哺乳動物細胞に導入すると、それぞれのdCas9は植物由来タンパク質ABIおよびPYL1の二量体化領域との融合タンパク質として発現し、標的部位に結合します。
培地中に植物ホルモンのアブシシン酸（ABA）を添加することにより、ABIとPYL1が結合し、クロマチンループ構造を形成させることができます。また細胞を洗浄してABAを除くことにより、ループ構造の解消を行えます。

参考文献：
Morgan, S. L., et al., Nat. Commun., 8 ,15993 (2017).

本システムを用いて、2種類の異なる遺伝子領域でクロマチンループ構造を形成し、それぞれの遺伝子発現量の変化を調べた。
図A：β-globin遺伝子部分でクロマチンループ構造を形成した（K562細胞および293T細胞）。
K562細胞ではβ-globin発現量が増大したが、293T細胞では有意な差がなかった。
Inducer only：誘導化試薬を添加して、それぞれ記載の時間（24、72時間）インキュベートした。
Inducer + washout：インキュベート（24、72時間）後に洗浄を行い、その後に更に同じ時間（24、72時間）インキュベートした。

図B：Oct4遺伝子部分でクロマチンループ構造を形成した（HEK293T細胞）。
誘導化試薬を添加した細胞において、Oct4発現量の増大が確認された。

※ベクターへのgRNA配列のクローニング、組換えレンチウイルスの作製・細胞への導入など、各ステップにおいて必要な試薬類については製品プロトコルをご確認下さい。また、関連製品については、それぞれ下記をご覧下さい。