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[掲載日情報:2017/09/01 現在]

Platypus Technologies社 Oris Assayシリーズに関するFAQ

Platypus Technologies社 Oris Assayシリーズに関するFAQ

■関連製品

Oris Cell Migration Assay Kit

Oris Pro Cell Migration Assay Kit

Oris CollagenⅠCell Invasion Assay Kit

Oris Pro CollagenⅠCell Invasion Assay Kit

■ Oris Assayを始めるにあたって

Q Oris Assayシリーズにはどのような製品がありますか?

A

細胞の化学運動性の検出や二次元でのclosure / woundアッセイなど,細胞遊走能を測定できる「Migration Assay Kit」シリーズと,三次元で細胞外マトリックスへの浸潤能を測定できる「Invasion Assay Kit」シリーズがあります。しかしながら,いずれのOris Assayも,ケモタキシスアッセイは不可能で,浮遊細胞には適用できません。

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Q 使用する細胞に適している細胞外マトリックス(Extracellular Matrix:ECM)は,どのように選択すればよいですか?

A

Stopperを用いるOris Migration Assayシリーズでは,ウェル底面のコーティングが異なる3種類の製品からお選びいただけます(未修飾(TC treated),コラーゲンⅠ,フィブロネクチン)。どのタイプのECMが適しているか不明な場合は,1つのプレートに3種類のコーティングが施されたTriCoatedタイプのご使用をお勧めします。また,Oris Universal Cell Migration Assay KitはStopperとプレートが別々に包装されており,ご自身で各種ECMをコーティングすることができます。

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Q OrisとOris Proの違いは?

A

Orisは,ウェル底面の細胞が遊走してくる部分をシリコン製のStopperで覆ってある製品です。Stopperを外すことにより細胞遊走がスタートします。プレートリーダーでの測定に適しています。また,遊走能を測定する前に,プレート内で細胞を目的物質で処理しておきたい場合などにも適しています。Oris Proは,細胞が遊走してくる部分に生物適合性ゲル(BCG)があらかじめセットされている製品です。細胞をアプライするとゲルが溶解し,遊走がスタートします。Stopperを外すという手動での操作が不要なため,ロボットシステムなどによる自動化が可能です。また,光学品質に優れたマイクロプレートを使用しており,ハイコンテントイメージングに適しています。

OrisとOris Proは,目的や使用する装置などに応じて使い分けることができます。尚,Platypus社では数種類の遊走阻害物質を用いた細胞遊走アッセイを行い,OrisとOrisProで測定結果に相違がないことを確認しています。

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■ アッセイの最適化について

Q 最適な細胞播種数はどのように決定すればよいですか?

A

遊走能の測定前に,StopperまたはBCGの周辺部において細胞が単層で95~100%コンフルエントになっている状態が理想です。細胞数が多すぎると測定する際に検出領域に細胞が入り込んでしまい,細胞数が少なすぎると細胞遊走に時間がかかってしまいます。実験前に数種類の細胞密度で播種し,最適な条件を検討する必要があります。

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Q 細胞の遊走,浸潤にはどのくらい時間がかかりますか?

A

Oris Assayシリーズに共通の利点として,アッセイの途中に各ウェルの検出領域を顕微鏡で観察することができ,どのくらい細胞が移動しているか確認できるという点が挙げられます。初めてOris Assayシリーズを使用する際には,一定時間ごとに顕微鏡下で細胞の移動状態を確認することをお勧めします。細胞の移動距離やスピードは,細胞の種類や使用しているECMの種類によって異なります。再現性(CV<15%)と精度(Z factor>0.4)の高い結果を得るためにも,細胞が検出領域の2/3を占めるエンドポイントとなる時間を決定する必要があります(実際には,細胞が検出領域を完全に埋めてしまう前にアッセイを終了することを推奨します)。例として,Cell Invasion Assayでは,細胞が上方領域のECM内に浸潤していくには24~72時間かかります。アッセイ時間を延長して行う場合は,48~72時間ごとに新しい培地に交換し,阻害物質など実験に使用している試薬を新たに添加することを推奨します。

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Q キットに含まれるプレートについて,一部分のみを使用して,残りのウェルを次回のアッセイに使用することはできますか?

A

OrisでウェルにセットされているStopperは,4個単位で使用でき,残りは保存しておくことができます。滅菌済みのプレートシールを使用してコンタミネーションを防ぎ,防湿性のバッグに入れ,4℃で保存して下さい。特に,ECMでコーティング済みのプレートは温度変化でタンパク質が変性する恐れがあるため,できるだけ早めに使用して下さい。また,細胞の固定を行う際は,試薬類が未使用のウェルに入らないよう注意して下さい。

一回のアッセイに使用するウェル数が少ない場合,Oris Cell Migration Assay Kit-FLEXをお勧めします。Stopperとプレートが別包装となっており,Stopperは96ウェル分,プレートは4枚付属しています。24ウェル単位でアッセイが行えるため便利です。Oris Proの場合,アッセイ中のインキュベーションなどにより,未使用ウェルのBCGが溶解してしまう恐れがあります。部分使用は推奨していません。

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Q OrisのStopperは再利用できますか?

A

オートクレーブやその他の化学薬品などによる滅菌操作により,Stopperのシーリング効果がなくなったり,形状が変化してしまう恐れがあります。Stopperは再利用しないで下さい。また,StopperはOrisキットに付属のプレートにフィットし,密着するよう最適化されています。キット付属以外のプレートの使用も避けて下さい。

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■ データ解析について

Q Oris Assayにおいて,細胞が増殖したのではなく,移動しているのだと明らかにする方法はありますか?

A

一般的に,細胞の増殖は細胞の倍化時間(doubling time)によって定義されます。まずは使用している細胞の倍化時間を確認し,アッセイ時間内では増殖できないということを明らかにして下さい。また,アッセイ中に細胞増殖が起こっているかを,抗Ki67抗体による免疫染色で確かめることも可能です。Ki67は増殖中の細胞に見られるマーカーとして知られています。

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■ 実験テクニックについて

Q Oris AssayでsiRNAによる機能抑制実験を行えますか?

A

OrisおよびOris Proのいずれも,siRNAを細胞に導入した後,細胞をアッセイプレートにアプライしてアッセイが行えます。Orisの場合はStopperで検出領域がカバーできるため,アッセイプレート内で直接siRNA導入が行えます*1

*1Jiang, et al., Int. J. Cancer., 127, 505~512 (2010).

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Q Oris Assayで目的物質を評価したい場合,どのタイミングで添加すればよいでしょうか?

A

Orisの場合は,細胞が接着・伸展した時点で目的物質を添加し,Stopperを外してアッセイをスタートさせればよいでしょう。Oris Proの場合は,BCGが溶解し,細胞が接着・伸展した時点で,細胞移動が始まる前に添加する必要があります。細胞接着に要する時間は細胞の種類や使用するECMの種類によって異なりますが,コラーゲンⅠコーティングプレートの場合で約1時間,未修飾(TC treated)プレートの場合で約3時間程度かかります。接着しなかった細胞を除去するために,培養液を交換してから目的物質を添加することを推奨します。また,浸潤アッセイの場合,目的物質はBMEまたはコラーゲンⅠ溶液に組み込んで添加するか,基質ゲルの重層後に加える培地に添加するとよいでしょう。.

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Q Orisアッセイで使用できる細胞染色試薬や色素は?

A

近赤外光色素からFITC,ローダミン,シアニンファミリーの蛍光色素まで,あらゆる蛍光色素が使用できます。Oris,Oris Proのいずれも,様々な細胞染色試薬にフレキシブルに対応可能です。Orisアッセイにおいて,検出領域内の細胞数を正確にカウントする際には,DAPIによる核染色が最適です。核が点状にはっきりと確認でき,顕微鏡イメージング用のソフトウェアなどで容易に検出できます。しかし,マイクロプレートリーダーの場合には,シグナル強度が低く,装置自体の検出感度も低いため適しません。TRITCファロイジンやCalcein AMにより,それぞれ細胞のF-アクチンと細胞質を染色し,検出領域を占める細胞の割合を検出することができます。

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Q Orisアッセイで細胞を播種する前に細胞染色を行う方法はありますか?

A

CellTracker GreenやDil(ライフテクノロジーズ社)などを使用して,アッセイ前の細胞を染色することが可能です。また,GFPなどの蛍光タンパク質を恒常発現している株細胞を使用することもできます。

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■ 移動・浸潤前コントロールの設定について

Q Stopperを使用するOrisでは,どのように移動・浸潤前コントロールを設定すればよいですか?

A

OrisのStopperは,アッセイ開始前に検出領域に細胞が移動していくのを防ぐ,物理的なバリヤの役割を担っています。この場合,アッセイが終了するまでStopperを外さないウェルを用意することで,移動前コントロールが作製できます。コントロール用のウェルでは,アッセイの間に細胞が増殖し過ぎてしまうのを防ぐため,通常よりも低い密度で細胞を播種する必要があります。アッセイ用のウェルではStopperを外す際に95~100%コンフルエントに達しているように細胞播き込み数を調整しますが,コントロール用のウェルでは50~75%程度になるよう調整します。コントロール用ウェルはアッセイが終わるまで(浸潤アッセイでは,ECMを重層する際も引き続き)Stopperをセットしたままにしておきます。アッセイが終了した時点でコントロール用ウェルからStopperを外し,アッセイ用ウェルと一緒に細胞染色,解析を行います。

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Q Stopperを使用しないOris Proでは,どのように移動・浸潤前コントロールを設定すればよいですか?

A

Oris Proではコントロールの設定にいくつか方法があります。①BCGが溶解し,細胞が接着・伸展した後,コントロールウェル(またはプレート)の細胞を固定する方法。アッセイが終了した後で,アッセイ用ウェルと一緒に細胞染色を行います。②BCGが溶解し,細胞が接着・伸展した後,すべてのウェルの画像を撮影する方法。この場合,アッセイ前に細胞染色しておくか,GFP発現細胞などを使用する必要があります。③アッセイ用ウェルのいくつかを,濃度の異なるサイトカラシンD(Cytochalasin D)で処理する方法。サイトカラシンDはアクチン重合阻害物質で,細胞運動を阻害します。サイトカラシンDで処理された細胞は検出領域周辺で移動できず,停止した状態となります。細胞毒性を示さず細胞運動を停止できる最適なサイトカラシンDの濃度(約0.5~2μM)を検証する必要があります。

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Q Orisアッセイで移動・浸潤前コントロールを設定する理由は?

A

移動・浸潤前コントロールは,細胞が移動してくる前の検出領域のサイズを決定するために使用します。Stopperを使用するOrisでは,少なくとも4ウェルをコントロールウェルとし(Stopperが4ウェル単位のため),アッセイが終了するまでStopperをセットしたままとすればよいため簡単です。Oris Proでは,Q14で示したようなコントロールの設定方法がありますが,1枚のアッセイプレートで異なる種類の細胞を使用する場合,それぞれに対してコントロールを設定する必要があります。

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■ 細胞播種テクニックについて

Q OrisおよびOris Proのアッセイプレートサイズを教えて下さい。

A
シリーズ名 Orisプレート
(Stopper付き)
Oris Proプレート
(BCG付き)
ウェル数 96ウェル 96ウェル 384ウェル
ウェル直径 ウェル底部 6.3 mm 6.58 mm 3.3 mm
ウェル上部 6.45 mm 6.96 mm 3.7 mm
プレート高さ ふた無し 14.9 mm 14.4 mm 14.4 mm
ふた有り 17.9 mm 17 mm
オフセット距離
(A-1)
X軸 14.4 mm 14.38 mm 12.13 mm
Y軸 11.2 mm 11.24 mm 8.99 mm
ウェル間距離 9.0 mm 9.0 mm 4.5 mm
ウェル深さ 12.2 mm 10.9 mm 11.5 mm
ウェル底面の厚さ 250μm 190±10μm 190±10μm
ウェル容量 400μl 392μl 138μl
細胞播種容量(推奨) 100μl 100μl 20μl

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Q Orisプレートで,セットされているStopperの脇から細胞をウェルにアプライする良い方法は?

A

Stopper側面のopen seeding portにピペットチップ先端を置き,ウェル入り口にチップを沿わせて細胞溶液を加えます。ピペットチップを差し込む際に,Stopperを動かしてしまわないよう注意して下さい。テーパードタイプのゲルローディングチップが適しています。

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Q いくつかのウェルで細胞が均一に分散していませんでした。均一に分散させる方法は?

A

Orisの場合,細胞を播種し終わってStopperを外す前に,プレートを軽く叩くと細胞が均一に分散します。この方法はOris Proでは使用できませんので,ご注意下さい。

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Q ウェル内の培地を吸引除去する際は,いつもバキューム装置を使用しています。Orisアッセイでも同様で問題ありませんか?

A

いいえ。バキューム装置の使用により,細胞まで除去してしまう可能性があり,せっかく形成された検出領域が壊れてしまう恐れがあります。また,接着力が弱い細胞の場合,バキューム装置によって吸引されてしまいます。ウェルから培地を除去する際は,自動液体分注装置やピペットをご使用下さい。

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Q Orisに付属のStopper Toolを使用してStopperを外す際に注意する点は?

A

Stopperをウェルから外す際に,Stopper Toolをてこの原理でウェルに引っ掛けて使用しないよう注意して下さい。ウェル底面の細胞がStopperに引きずられ,検出領域が変形してしまう恐れがあります。Stopperを外す際は,まずプレートをしっかりと固定し,Stopper Toolの櫛形になっている部分を,Stopperストリップとプレート上部の間に滑り込ませ,ぴったり密着させて下さい。次に,Stopper Toolを上方に向かって穏やかに真っ直ぐ引き上げ,Stopperを外して下さい。Platypus社ウェブサイトでは,操作方法が動画で紹介されています。

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■ トラブルシューティング

Q アッセイを開始する前に,検出領域内に細胞が入り込んでいるのはなぜですか?

A

使用している細胞の,未修飾プレート(TC treated)底面に対する接着性が弱いことが原因と考えられます。ECMコーティングプレートを使用し,細胞とのウェル底面への接着性を高めて下さい。Stopperを使用するOrisの場合,Stopperを外した際に,細胞数が多すぎる,または細胞の接着性が低いと検出領域に細胞が入ってしまう恐れがあります。細胞の播き込み数の調整や,播種後の接着時間を延長する必要があります。

Oris Proの場合,播種する細胞溶液量を減らすことで,BCGが溶解する前にウェル底面に細胞を確実に接着させることができます。Oris Pro 96ウェルプレートの場合は100μl以下,384ウェルプレートの場合は20μl以下の細胞容量を推奨します。また,BCGが溶解し,細胞が接着するまでは,プレートに衝撃を与えないよう注意して下さい。

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Q Orisアッセイシリーズのうち,Assembly KitやBME Invasion Kitなどでは,Stopperをユーザー自身でセットしますが,各ウェルに確実にセットする方法を教えて下さい。

A

Stopperをセットした後,プレートを反転させて,ウェル底面を見て下さい。Stopperを確実にセットできると,ウェル底面の中心部分に蛇の目模様が確認できます。セットに失敗してしまった場合は,再度やり直すこともできます。

Platypus社ウェブサイトでは,操作方法やウェル底面の蛇の目模様が動画で紹介されています。

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■ Oris / Oris Pro Collagen ⅠCell Invasion Assay KitのCollagenⅠ溶液について

Q CollagenⅠ溶液を中和し,OrisおよびOris Proアッセイプレートに重層してゲル化させましたが,翌日には液状化してしまいました。なぜでしょうか?

A

おそらく,使用した細胞がMMP(matrix metalloprotease)を発現するタイプの細胞で,重層したCollagenⅠゲルを分解してしまったと考えられます。MMPによる分解の影響を受けにくいECMタンパク質を用いてみると良いでしょう。

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■ Oris アッセイシリーズと,他の細胞移動アッセイ系の違いについて

Q スクラッチアッセイとOris / Oris Pro Cell Migration Assay Kitでの結果に違いがあるのはなぜですか?

A

スクラッチアッセイ(創傷治癒アッセイ,wound healing アッセイ)は,細胞単層に傷を付けるため,細胞は損傷を受け,細胞死が起こります。損傷を受けた細胞や死細胞が放出する因子は,創傷を治癒しようとしている近隣の正常細胞に影響を及ぼします。StopperやBCGを用いて細胞が存在しない検出領域を作り出すOrisアッセイシリーズでは,こうした細胞のダメージは一切ありません。また,スクラッチアッセイの場合のみ活性が現れる化合物などもあります。これは,損傷細胞や死細胞が放出する因子によって活性化したシグナル伝達経路に化合物が反応しているためです。細胞骨格そのものを阻害する物質などを用いると,いずれのアッセイでも同様の結果が得られます。このことから,Orisアッセイにより,スクラッチアッセイで得られた結果を補うことができると考えられます。スクラッチアッセイで得られた結果が確かなものなのか,創傷細胞が放出する何らかの因子による影響なのか,確定する必要があります。Platypus社ウェブサイトでは,アプリケーション例を紹介しています。

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Q ボイデンチャンバーを用いた膜通過アッセイとOris / Oris Pro Cell MigrationおよびInvasion Assay Kitでの結果に違いがあるのはなぜですか?

A

ボイデンチャンバーを用いたアッセイでは,細胞が膜を通り抜けることができるかを検証しますが,その膜が細胞の運動能を変化,阻害するバリアとなります。Orisアッセイはこうしたバリアは存在しません。また,Oris Invasion Assayでは,膜通過アッセイのようにECMコートした膜上のみで細胞を播種するわけではなく,細胞はECMで完全に覆われます。更にOrisアッセイでは,イメージングシステムを使用したリアルタイム解析も可能です。

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