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MACE®が創薬研究を加速する(株式会社リンクバイオ)

掲載日情報:2022/05/16 現在Webページ番号:69933

Frontiers

Vol. 82 MACE®が創薬研究を加速する

(株)リンクバイオは、2020年5月に設立された東京大学発のバイオ創薬支援を行うスタートアップ企業です。取締役兼最高技術責任者(CTO)の吉本敬太郎准教授(東京大学)が開発したMACE®(右図)を導入したSELEX法により、結合親和性の高い核酸アプタマーを探索するサービスを提供しています。
Microbeads Assisted Capillary Electrophoresis: MACE®


MACE概要図

分子ライブラリーと進化分子工学実験系をリンクさせる

新型コロナウイルスパンデミックにより、世界レベルで別次元のスピードによる新薬・診断薬の開発が必要とされ始めました。“MACE®”および“MACE®-SELEX”の開発者である吉本准教授のもとに共同研究の依頼が集まるようになり、本技術をいち早く社会還元する必要があると判断し、コロナ禍第一波の最中である2020年5月、(株)リンクバイオを創業するに至りました。

近年、様々なモダリティの分子ライブラリーがオープンイノベーションにより創出され、創薬分野で注目されています。MACE®は進化分子工学実験系の過程を『視える化』する分子分離技術であり、核酸をタグとする様々な分子ライブラリーに高い技術親和性があります。バイオ分野で創出された分子ライブラリーとMACE®を繋ぐ(リンクする)ことで、医薬品・診断薬・バイオ素材の開発支援をドラッグディスカバリーのステージで行うことが(株)リンクバイオの使命と考えています。

高親和性アプタマーの選抜

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核酸アプタマーの特長

アプタマー(Aptamer)はバイオサイエンス分野における専門用語で、標的分子に結合する分子を指します。核酸塩基配列を骨格とする分子、アミノ酸配列を骨格とする分子をそれぞれ“核酸アプタマー”、“ペプチドアプタマー”と呼びます。核酸アプタマーは、標的分子に対して高い結合親和性を示す生体高分子という点において抗体と似ていますが、抗体には無い以下の特長をもっています。

  • 化学合成できる(タンパク質よりもロット間の差が小さく、GMPグレードの合成が容易)。
  • 塩基配列がわかっていれば、PCR用プライマーと同じ感覚で、短納期かつ安価に入手可能。
  • 複数のアプタマーを連結したものなどを自由にデザインし、入手することが可能。
  • 標的分子や溶液条件に制限がない(毒物に対するアプタマーや、非生理条件下で結合するアプタマーの獲得が可能)。
  • 相補鎖で結合を解除(薬効を中和)することができる。
  • 高い保存性で、不可逆な変性が起きない(常温保存・輸送が可能)。
  • PCRで増幅することが可能(検出系の超高感度化)。
核酸アプタマーの優位性

研究における優位性:
 ①構造・機能の最適化が容易
 ②最適化されたアプタマーが短期間で入手可能
治療薬としての優位性:相補鎖で中和可能な薬剤の獲得が可能
検出薬としての優位性:増幅反応を利用することで高感度化が可能


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黒い袋の中を「視える化」する

アプタマーの獲得に用いられてきたSELEX法を始めとする進化分子工学系選抜法は、試験管内で有象無象の多様な分子集団の中から、ダーウィン的進化プロセスを繰り返し行うことでわずかしか存在しない目的の機能を有する分子を探索・選抜する手法です。分かり易いのが、様々な首の長さを持つキリンが長い年月をかけ自然淘汰によって長首のキリンだけになっていく過程です。SELEX法においても短首のキリン(不要な分子)を淘汰(分離・排除)させ、長首のキリン(アプタマー)を効率良く進化(分離・選抜)させることが求められます。

自然淘汰の例

吉本准教授は、十数回の選抜工程が必要な従来型のSELEX法によってアプタマー獲得を数年試みましたが、全く獲得できない期間を経験されました。ある膜タンパク質に対するアプタマーを初めて獲得した際に、「やっと取れた!」と同時に、「なぜこんなに成功率が低いのか?」と疑問に思われたそうです。ある文献によると、従来型SELEX法の一般的な成功確率は3割程度1と言われています。吉本准教授は、SELEX法を含め進化分子工学系実験は、あたかも黒い袋の中にある宝くじを手探りで探す状態に近いことを痛感されたそうです。この実体験から、「袋を透明化して目的とする宝くじ(核酸アプタマー)の所在が外側から視えれば、選抜実験の成功確率が大きく向上するはずだ」と考え、キャピラリー電気泳動法を用いて不要分子と目的分子を確実に分離しつつ、各分子の所在を「視える化」する技術MACE®を発案されました。MACE®をSELEX法に導入したところ、研究室内の核酸アプタマー獲得成功率は7~8割程度まで向上したそうです。また、向上したのは成功率だけではなく、核酸アプタマーの質(結合親和性)と獲得数も大幅に改善されました。おそらく、キャピラリー内で発生する長時間の非平衡状態などが要因となり、3回という少ない選抜工程にもかかわらず、KD値がnMオーダーの結合親和性をもつDNAアプタマーを10~15配列ほど同時に獲得することに成功し、さらに既報のアプタマーよりも高い結合親和性を示すものが含まれていることが明らかとなっています2、3。さらに興味深いことに、in vitroにおける薬効(抗凝固活性)評価でMACE®-SELEX法で獲得したトロンビンアプタマーが既報アプタマーよりも20倍高い値を示すという成果が得られました2

MACEによる視える化

以上の成果は、進化分子工学系選抜法において、分離・洗浄工程がいかに重要であるかを示すものです。当技術の特許は「MACE®-SELEX:核酸アプタマーをスクリーニングする方法」として東京大学と(株)リンクバイオで共同出願し、現在までに米国・中国・日本・台湾で成立しています。


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アプタマー普及の応援団として

アプタマーの利用は、計測化学や医療分野への貢献に期待できます。

  • 研究用試薬(蛍光染色試薬など)
  • アフィニティークロマトグラフィーなどの分離用カラム
  • ヘルスケア診断キットおよび医療用診断薬
  • 環境モニタリング用各種センサーにおける分子認識素子
  • 薬効中和剤が一緒になった治療薬
  • バイスペシフィック型の治療薬

(株)リンクバイオはアプタマーを広めるための一番の応援団となり、アプタマーが産業活用されるよう良質なアプタマーを研究者の皆さんの身近にお届けするとともに、日本におけるバイオ産業活発化の一翼を担いたいと考えています。また、MACE®の適用を他の進化分子工学系選抜法(創出分子:ペプチド、低分子薬候補物質)に拡げ、ドラッグディスカバリーステージの研究活動を幅広く支援することで、創薬開発に大きく貢献し続けたいと考えます。


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研究者の皆様へ

SELEX法が提案されてから約30年が経過しました。しかし、核酸アプタマーは未だ産業界に十分に浸透しているとは言えません。様々な特長をもつ核酸アプタマーを活用しきれていない現状は、大きな損失であると私たちは考えます。ぜひ研究者の皆様に、開拓の余地が大いに残されているアプタマーを利活用していただきたいと思います。


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参考文献

  1. “Aptamer-based multiplexed proteomic technology forbiomarker discovery”
    Gold, L., et al., PLoS One, 5(12), e15004(2010).[PMID:21165148
  2. “Rapidly Neutralizable and Highly Anticoagulant Thrombin-Binding DNA Aptamer Discovered by MACE SELEX”
    Wakui, K., et al., Mol. Ther. Nucleic Acids, 16, 348~359(2019).[PMID:30986696
  3. “Accelerated Discovery of Potent Bioactive anti-TNFα Aptamers by Microbead-Assisted Capillary Electrophoresis(MACE)-SELEX”
    Nagano, M., et al., ChemBioChem, 22(23), 3341~3347(2021).[PMID:34549879

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MACE®-SELEX法によるアプタマー探索受託サービス

本サービスは“MACE®-SELEX”法(特許第6994198号)による核酸アプタマーの探索受託サービスです。得られた候補配列について非修飾オリゴDNAをご提供いたします。

受託サービスの詳細はこちらをご覧下さい。

受託サービス概要

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