Vol. 83 パーソナルユースできる小型実験機器メーカー(Biosan 社)

掲載日情報:2022/06/01 現在Webページ番号:65959

Frontiers

Vol. 83 パーソナルユースできる小型実験機器メーカー(Biosan 社)

Biosan 社は、バルト三国の中央に位置するラトビアに拠点を置き、ライフサイエンス 研究でのパーソナルユースを中心とした実験機器を開発・販売しています。 今回は創業者の一人であり、取締役会長兼 CEO の Dr. Vasily Bankovsky(写真左) にお話を伺いました。

Dr. Vasily Bankovsky and MSc. Svetlana Bankovska

Biosan 社について

Biosan は 1992 年、ラトビア共和国科学アカデミー 微生物研究所に在籍していた私と妻 Svetlana Bankovska(写真右)の 2 人で創業しました。 社名は、Life を意味する“Bio”と太陽(Sun)に由来する“San”を組み合わせたものです。 さらに“San”は、復活やリハビリテーション、浄化、回復などの意味を持つ“Sanatorium”にも 由来しています。

これらは、Biosan の企業理念である「人々の暮らしにおける癒しや生活の質の向上、そして自然 と地球の再生のためのモノづくり」という企業理念に一致しています。 私たちは当社の製品開発コンセプトを“The World of Biotech-Innovatica”と呼んでいます。 Terra Innovatica(研究中のバイオマテリアル)を中心として、“遺伝子”、“免疫学”、“生物化学”、 “細胞”の 4 つのカテゴリー(惑星)に分け、そのカテゴリーに関係する各分野の製品の開発を 行っています。これには、惑星と衛星の関係のように各研究分野に Biosan の製品が寄り添う存在になりたいという思いを込めています。

The World of Biotech-Innovatica

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Biosan 社の強み

ユーザー目線による製品開発が強みです。実験操作において、用いる試料が少なかったり、混合時の温度制御が不十分であったり、または実験室内の空気が汚染していたなどの積み重ねが、実験がうまくいかなくなる原因になります。これらの原因を最小限に抑えるために、私たちは特に試料を調製しやすくする製品の提供に力を入れており、エレガントなデザインのコンパクトで多機能な製品を幅広く生み出しています。

世界のバイオテクノロジー市場では、革新的でデザイン性が高く、ユーザーひとりひとりに寄り添った製品作りが求められており、 Biosan の製品はパーソナルユースできる研究用製品として世界中に知られるようになりました。現在では、世界的な販売代理店ネットワークも確立しています。

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製品開発とこれまでの 30 年間を振り返って

私たちは毎年新製品をリリースしていますが、その秘訣はとてもシンプルです。Biosan を設立する前、私はラトビア科学アカデミーで 20 年間働き、実験助手から遺伝子工学研究室の責任者まで経験しました。その経験から、微生物学、ウイルス学、生化学、分子生物学の分野で研究のトレンドを予測する術を得たため、研究者が直面するであろう問題に対して画期的な解決策を見出すことができます。また、Biosan には優秀な開発チームがあり、革新的で生産性の高い仕事ができています。これまでの 30 年を振り返ると、情に厚い同僚、そしてラトビア共和国や欧州連合(EU)からの支援のおかげで、Biosan の事業を進めることができたと思います。

Biosan-Anniversary1992-2022

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Personal Bioreactor:RTS シリーズについて

一般的によく利用されているフラスコによる振とう培養は、規模の大きなファーメンターによる培養と振とう原理が異なるため、フラスコ培養の条件をそのまま当てはめられないといった問題があります。さらには微生物の増殖の様子を経時的に観察し、データを取得するにはシェーカーを止めてサンプルを取出したり、生理食塩水に再懸濁したり…このような苦痛とも言える手間のかかる作業を、15~30 時間という長い時間の間で、1 時間ごとに繰り返して行う必要があります。そのため研究者はこれらの作業負担を軽く出来る装置の登場を待ちわびていました。 Biosan 社はこの研究者のニーズに応えるべく、RTS シリーズを開発し販売するに至りました。

RTS-1 の内部構造とReverse-Spin Technology のイメージ図

RTS シリーズは培養チューブの回転を一定時間ごとに高速に反転させる特許技術 「Reverse-Spin Technology」を採用しています。回転が停止した瞬間に発生する培養液の波によって、培養液に細かな気泡を多量に溶け込ませることで溶存酸素量を高め、ファーメンターに匹敵する高密度の培養を可能にしています。この特許技術と近赤外光学システムの組み合わせにより、培養動作を止めることなくリアルタイムで細胞増殖の様子を観察、データを取得することができます。 RTS シリーズには、1 チャンネルタイプの RTS-1 / RTS-1C と 8 チャンネルタイプの RTS-8 / RTS-8 Plus があります。RTS-8 は撹拌速度や温度条件などを個別に設定することができ、一度に複数の培養条件の検討が可能です。加えて RTS-8 Plus では、O2と pH のセンサー付き専用培養チューブを使用することで、溶存酸素濃度やpH測定もリアルタイムで可能です。このセンサーを装置に採用するにあたっては、ドイツを中心と した他の企業との協力が必要だったので、開発段階ではとても苦労したことを今でも 覚えています。

RTS シリーズは特に、ストレス環境下での微生物進化の基礎研究分野で注目されています(製品の詳細は次のページでご紹介します)。RTS シリーズは、多大な労力と時間がかかる作業を実験者に代わって行ってくれます。私たちはこのような製品開発を “Bio Robotics”と称し、今後より発展著しい開発テーマとして現在プロジェクトを進めています。

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日本の研究者の皆様へ

先を見据えた知識の積み重ねと、ほんの小さなきっかけさえあればイノベーションを追求できます。イノベーションの芽を育て続けることが、私たちのライフスタイルの大幅な改善に繋がるでしょう。

クリスマスパーティーを楽しむ Biosan 社の社員たち

クリスマスパーティーを楽しむ Biosan 社の社員たち

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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 機器・消耗品担当)

kiki@funakoshi.co.jp

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